シヴファンの皆さん、こんにちは。サラが新たな開発者日記をお届けします。今回は、「シヴィライゼーション」シリーズの2大要素である指導者と文明について深堀りします。この点を説明するなら、何といってもFiraxisに19年以上勤めてきたベテランのリードフランチャイズプロデューサー、デニス・シャークが適任でしょう。ここからはデニスがご案内します。
Firaxisのデニス・シャークです。指導者と文明は私にとって大切なもので、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の開発秘話を紹介できることを嬉しく思います。ゲームに登場する指導者や文明を決定したプロセスを説明し、指導者と文明を自由に組み合わせられるようにした理由をお話し、最後に『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の新要素の概要を紹介して、今後の展望で諦めます。では、始めましょう!
指導者と文明の選定
ゲームに採用する指導者や文明の選び方は年々進化しており、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、また新たな境地に達しています。過去には、選定プロセスが緩いこともしばしばありました。デザイナーが「これは面白いかも」と思ったら、それだけでゲームに入れることもありました。シリーズが成長し、世界中で「シヴィライゼーション」コミュニティが拡大するなか、ゲームに適格な指導者や文明について、より熟慮が必要になりました。
基本的に、下記のような基準に沿って指導者や文明を選んでいます。
- 歴史的に傑出している。プレイヤーに歴史について考えてもらうと、一貫して上位に挙がってくる歴史上の文明や人物があります。世界に顕著な爪跡を残した指導者や国家は、いつでも有力な候補になります。
- プレイヤーの国を代表する。特にこの10年間では、コミュニティの規模も世界中のプレイヤーと繋がる方法も目覚ましく成長しました。代表者がいるということは、多くの「シヴィライゼーション」プレイヤー、特にこれまで代表してくれる存在がいなかったプレイヤーにとって深い意義を持ちます。
- ゲームとして面白い。当然、指導者と文明はプレイしていて楽しくなければなりません。歴史の中で特に興味深い道を切り拓いた人物や、ユニークなゲームプレイができる可能性が高い文明を候補に考えます。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』で採用する新たな機能によって、この選定プロセスは大きく変わりました。特に2つのことが私たちの考え方を変えました。1つは「時代」、もう1つは指導者と文明を自由に組み合わせられることです。
エドが以前に紹介したように、時代は歴史をプレイ可能な複数の章に分割し、それぞれの文明はその時代でのみ使えます。このシステムの直接的な成果と利点の一つは、文明に「より深く」飛び込めるようになったことです。文明が歴史全体の中で傑出しているという基準ではなく、一つの時代に絞ってその考え方を適用できるようになりました。アクスムやマウリヤ朝インドはその好例で、歴史の特定の時期に有力だった文化です。
指導者と文明を自由に組み合わせられるようになったことで、これまでセットだったものを切り離しました。これは特に自由度が広がる要素です。過去作では、指導者はそれぞれの文明で最も人気あるいは著名な人物である必要があり、必然的に支配者や王、大統領などの政治的な人物に偏ることが多くなってしまいました。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、孔子やベンジャミン・フランクリンといった哲学、人権、科学などの偉人が指導者の地位に昇格しています。
もちろんパーソナリティもあります。多くの指導者や文明は、複雑で多面的な歴史を持っていました。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』でパーソナリティを採用したのは、様々な文明に縁のある歴史上の人物や、政治において固有かつ重要な2つの領域に秀でた人物を評価するためです。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、後者をより重視してパーソナリティを再採用しました。前者は指導者を自由に組み合わせられる機能で解決できるためです。それぞれのパーソナリティは、固有能力とアジェンダ、個性的な衣装と背景など、指導者独自の特徴を備えています。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』での例を挙げると、ナポレオン*はフランス革命時と後の治世における生涯を反映して、皇帝**または革命家***のパーソナリティをプレイできます。
そして最後に、指導者と文明は、スタジオの一人や一部門によって選ばれたのではなく、チーム全体が協力を重ねて決定しました。アートチーム、歴史家、デザイナー、コミュニティなどから寄せられた声を考慮しています。それぞれが自身の視点を持ち寄ることで、ラインナップが形成されています。指導者と文明に命を吹き込むには、私たち皆が一体となることが不可欠なのです。
自由な組み合わせを採用した理由
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の特筆すべき特徴の一つは、指導者と文明を自由に組み合わせられることです。先ほど少し触れましたが、その考えに至った過程についてさらに詳しくご説明しましょう。
自由な組み合わせを採用した大きな理由は、時代をサポートするためです。過去作では、常にゲーム全体を通して同じ指導者と文明のセットをプレイしていました。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、プレイヤーの国家は複数の異なる文明を持つことになります。そこで、プレイヤーには自分が誰であり、誰と対峙しているのかという意識を変わらず維持できるようにする必要がありました。
時代では、文明と指導者の扱いについて、いくつかのアプローチを検討しました。例えば、時代ごとに指導者を交代させる、また、インド(マウリヤ朝→チョーラ朝→ムガル帝国)で採用したように各文明が積み重なるようにデザインするという案がありました。
それぞれの選択肢に欠点がありました。指導者が変われば、誰をプレイしているのかが特に分かりにくくなると確信していました。プレイヤーが同盟締結や宣戦布告について話すとき、相手としてエジプトやインド、アステカではなくクレオパトラやガンジー、モンテスマという指導者名をあげることが多くありました。もしゲームの途中で指導者が変われば、プレイヤーの頭の中でストーリーが混乱してしまうことになります。
同じように、直接的な歴史のつながりによって積み重なる文明しか選べなければ、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』に採用できる人物が大幅に制限されることになります。歴史全体で存在する文明しか選べなくなるので、アメリカは除外されてしまいます。
そこで、どうして自由な組み合わせ、そしてどうして「時代」なのかという話に至ります。このシステムがあることで、自身の国家、味方、世界の舞台でのライバルたちのアイデンティティをしっかりと維持できるのです。国家が厳密に積み重なるのではなく、歴史的な「経路」を作ることで、何度でもプレイして楽しめるようになり、より多くの文化を表現できるようになります。指導者を新しいカテゴリに拡大し、多くのプレイヤーが初めて知るような形で、人類史に寄与した人物にスポットライトを当てることができます。もちろん戦略性も広がります。それぞれの指導者が独自のプレイスタイルを持っており、そのプレイスタイルを時代内の各文明の特色と組み合わせることができるのです。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の新要素
構造とカテゴリの変更点を見てきたところで、次は指導者と文明の要素を見ていきましょう。
前述のように、全ての文明は特定の時代と結び付いており、その文明の最盛期を体験できます。各文明には固有能力、固有インフラ、社会制度ツリー、固有遺産、固有ユニット(民間人と軍事)、開始地点のバイアスがあります。これらが組み合わさることで、文明は軍事、外交、領土拡張、科学、文化、経済という特定のプレイスタイルに誘導されます。
例えば、漢王朝は古代の文明です。漢王朝固有の社会制度ツリーを完成させると、「縁故」、「九卿」、「天下」の伝統を解除できます。選択した文明に関係なく、それぞれを次の時代における国家の社会政策スロットに挿入できます。
漢王朝には、固有の施設として「長城」という固有インフラがあます。対照的に、ローマの固有インフラは固有街区の「フォルム」です。ローマの2つの固有の建造物であるユピテル神殿とバシリカを1つの街区で組み合わせることで作ります。長城やフォルムのような固有インフラは全時代共通であり、その効果は全ての時代にわたって永続し、その上に建設を重ねることができません。
固有の民間人ユニットにも様々なスタイルがあります。漢王朝の「士大夫」は縮小した「偉人」システムのようなもので、士大夫ごとに異なる報酬が得られ、受け取りは1度のみで、コストが高くなっていきます。一方、マヤのジャガースレイヤーは斥候ユニットに置き換わるユニットで、樹草タイル上に見えない罠を張り、敵ユニットにダメージを与えて移動を終わらせます。
全ての文明には遺産があり、文明固有の社会制度ツリーでその遺産を早く解除したり、遺産を建設する際の生産力ボーナスを得たりすることができます。これらの遺産は、1つの文明に固有のものではありません。固有の遺産を建設するのに時間がかかりすぎると、他のプレイヤーに先を越されるかもしれません。
指導者については、それぞれに固有能力、アジェンダ、そして稀に開始時バイアスがあり、ここでもプレイスタイルが上記の分類に誘導されます。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、AIが指導者と文明の最適なペアを提案します。これは主に歴史的・地理的な繋がりによって判定します。新しいゲームを始めるときに小さなアイコンで選択肢が表示されますが、指導者と文明の組み合わせは自由に選ぶことができます。歴史的な没入感よりも戦略性を重視するのであれば、指導者のプレイスタイルと文明のプレイスタイルをマッチさせましょう。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の指導者に「属性」システムが新たに追加されました。属性は文化、外交、経済、領土拡張主義、軍事、科学という6つのカテゴリに分かれており、これにより指導者をさらにカスタマイズできます。指導者と文明はこれらのカテゴリで異なる強みを持ち、ゲームプレイで獲得する特定の「属性ポイント」との親和性が決まります。このポイントを属性の「スキルツリー」に消費して指導者を強化します。例えば、アウグストゥスは「文化」を重視しているため、文化の属性ポイントを獲得しやすくなるでしょう。
重要なのは、属性とそのボーナスは時代をまたいで持ち越されることです。これで国家と共に指導者も時を超えて成長していきます。属性ポイントは、様々な行動で獲得できます。特定の遺産を建設する、特定の社会制度を研究する、ストーリーイベントをクリアする、勝利パスに沿うマイルストーンを完了した際の報酬として獲得するなどです。
今後の展望
指導者と文明は「シヴィライゼーション」シリーズの要です。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』で全ての指導者と文明を体験していただけると幸いです。時代のほか、文明の交代、自由な組み合わせといった機能を通じて、これまで以上に広く深く文明に入り込めるようになりました。エドは、発売時点からプレイできる文明が最多になること、指導者についても同様であることを紹介してくれました。追加された指導者パーソナリティと合わせて、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』はシリーズ史上最多の指導者が揃った状態で発売することになります。
次回の開発者日記は、コアな「シヴィライゼーション」ファン待望のトピックである国家の運営です。都市の仕組み、人口、産出力、「倉庫」という建造物、過剰建築などを詳しく解説します。ご不明な点がありましたら、引き続きSNSでご意見やご感想をお寄せください。いつも「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」を愛していただき、ありがとうございます。
*指導者ナポレオンはゲーム本編には含まれていません。
**ナポレオン(皇帝)は、2Kアカウントと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のプレイに使用するプラットフォームのアカウントをリンクさせたプレイヤー向けの追加コンテンツです。インターネット接続が必要です。2Kアカウントは無料です。受け取りは2Kアカウント1つにつき1回のみです。報酬はゲーム内に自動的に実装されます。適用外の地域では無効となります。利用規約が適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。
***ナポレオン(革命家)は、2Kアカウントと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』および『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のプレイに使用するプラットフォームのアカウントをリンクさせたプレイヤー向けの追加コンテンツです。インターネット接続が必要です。2Kアカウントは無料です。受け取りは2Kアカウント1つにつき1回のみです。報酬はゲーム内に自動的に実装されます。適用外の地域では無効となります。利用規約が適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。