CIVILIZATION VII

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』開発者日記#1:時代

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『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のコミュニティマネージャーを務めるサラです。これから数ヶ月間にかけて、開発者ブログをシリーズで公開していきます。このブログは、Firaxis開発チームのメンバーが「シヴィライゼーション」コミュニティのためにお届けするものです。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』を特別たらしめるディテールを深く掘り下げていきますので、全てを知り尽くしたい方はぜひご覧ください。 

今回のブログでは、クリエイティブディレクターのエド・ビーチが『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』最大の新機能である「時代」について解説します。いつものように、ご質問やご意見がありましたら、私までお寄せください。それでは、お楽しみください。

Age Select - Hatshepsut

シヴファンの皆さん、私はFiraxis Gamesで『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のクリエイティブディレクターを務めているエド・ビーチです。コミュニティの間で議論の的になっている「時代」を皮切りに開発者ブログを始めることができ嬉しく思います。ここでは、時代の仕組みをお伝えし、そもそもこのシステムを導入することにした理由を少しご紹介します。また、時代をまたぐ旅が壮大で楽しく感じられるようにする「時代の移行」のシステムなど、コミュニティが疑問に思っていた部分についても詳しく解説します。 

「時代」の紹介

以前にもお話ししたように、時代は「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」にとって大きなゲームプレイの進化で、四角形から六角形のタイルに変わったときと同じくらいの重要性を持ちます。基本的に、時代は「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の1ゲームを個別のプレイ可能なチャプターに分割するものです。全ての時代は、人類の進歩における特定の時代のエッセンスを捉える設計となっており、これは歴史的に関連性のある要素で時代を満たすことによって達成されます。次の時代へと移り変わると、国家は進化します。新たなボーナスやユニット、建造物が揃った新たな文明を選択します。この新しい文明は過去からの主要な要素を引き継ぎます。ゲームが終わる頃には、時の試練に耐える国家を築き上げる歴史の旅の中で、ユニークな文化の潮流が完成していることでしょう。 

時代は、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」史上かつてなかった新しい体験です。独自の文化の潮流を築き上げるという概念は、一つの文明がずっと続いていくこれまでの国家とは対照的です。時代を創るインスピレーションとなった「歴史は重なって形作られる」という概念に興味がある方は、PAX Westでの開発者パネルディスカッションをご覧ください。今回のブログでは、時代の「仕組みとデザイン」を扱います。

Egyptian City

なぜ「時代」なのか

デザイナー陣と『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のアイデア出しを始めたとき、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』を率直に見直すことから始めました。それぞれ改善したい点を全員に挙げてもらい、次の会議で改善点を見比べました。

Firaxisでは、自分たちの作品を最も厳しく批評するのは私たち自身であると常々強調していますが、デザイナーたちの声には私も驚きました。隅々まで洗い出しを行い、フィードバックを見ていくと、ある1つの問題が繰り返し浮上しました。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」は、ゲーム後半になるとプレイしていてあまり楽しくないと。

この問題に取り組むべく、その意見を具体的な根本原因に分解する必要がありました。下記が特定されたその内容です。

  • 雪だるま式。つまり、始まりは小さく、それが勢いを増し、やがて止まらなくなることです。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」では、自分の国家があまりにも急速に進歩して他のプレイヤーが追いつけない、あるいは自分が遅れをとって追いつけなくなる状況です。どちらのシナリオでも、あなたが下した選択や決断は最終的な結果に一石を投じることにはなりません。
  • 煩雑な管理「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」は、4Xというジャンルの多くの作品と同様、時間が進むにつれ、必要な行動の数が増えていきます。最初の数時間のうちは都市や労働者、軍隊が少なくて扱いやすく、多くのプレイヤーが最も楽しいと感じます。しかし、プレイするほど国家は大きくなり、何十もの都市のために決断を下したり、何十ものユニットを一つずつ動かしたりすることになります。プレイヤーにとってただの作業になってしまうと同時に、全ての決断がそれほど重要でないように感じられます。
  • 文明のバランス。文明のデザインは、歴史的出来事や文化からインスピレーションを得ているため、固有能力、ユニット、建造物は、そのアイデンティティを保ちながらも、全ての歴史にまたがるゲーム全体でバランスが取れている必要があります。このため、どの文明もゲーム中の特定の時点では有力になれるものの、別の時点では平凡になったりします。興味深いのは、雪だるま式展開のため、競争志向の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」プレイヤーは、ゲーム終盤に強い文明を選ぶことがほとんどないということです。これらの能力やユニットが本領を発揮する頃には、他のプレイヤーが既に手の施しようがないほどの差をつけているためです。

これらはチームが特定したことのほんの数例に過ぎません。中でも驚いたのが、ある一つのデータです。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』を一度もクリアしていないプレイヤーが全体の半数以上にもなるというものです。 

そして、コミュニティの一部からは、これは本当に解決が必要な問題なのかと疑問視する声がありました。プレイヤーが現状の「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」を楽しんでいるなら、何が問題なのかと。

私たちからすると、ゲームをクリアできないということは、プレイヤーに飽きが来ているというシグナルなのです。全ての人に最初から最後まで素晴らしい経験をしていただきたいと思っています。私たちは、プレイヤーが「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の最初の数時間に魔法のような魅力を感じることが多いことを認識しています。序盤の壮大さとワクワク感がゲーム全体で続くようにしたいのです。 

そこで、この問題を念頭に置きながら、上述の「歴史は重なって形作られる」の概念と併せ、ゲームを歴史上のテーマに沿ったチャプターに分けることが最善策だと考えました。この構造は、続き物の小説に例えることができるでしょう。それぞれの時代に序破急の物語があるのです。そしてこれらの巻が一つになって、あなたの国家の壮大な物語が完結します。

Mongolian City

「時代」をプレイする

驚かれるかもしれませんが、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の「時代」をプレイした実際の体験は、これまでの「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」と近しいものを感じるというのがプレイテストやフィードバックから明らかになっています。ご存知のファンも多いですが、シド・マイヤーは続編をデザインする際、3分の1の法則を適用しています。33%は新しい機能に、33%はこれまでの機能の改良に、33%は不変を維持することに注力しています。この伝統は、今作が「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」らしいと感じるようにするために極めて重要であり、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』でも踏襲しています。 

それぞれの時代は、いわば「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」のゲームを凝縮したようなものです。これまでと同じように、首都を建設し、周囲の土地を発見し、資源を見つけ、他の文明と協力したり競争したりします。今回異なるのは、全ての時代に固有の主要な要素が揃っていることです。それはすなわち以下のとおりです。

  • 文明:文明はその時代で完結し、固有の能力、ユニット、社会制度、建造物、施設を備えています。各文明の固有の部分は、必ずその時代にとって重要な要素であるため、それぞれの文明が全盛期の状態で競争しているように感じられます。
  • 資源:各時代には、マップ上で獲得可能な「資源」があります。複数の時代で登場する資源もあれば、個々の時代限定のものもあります。
  • 社会制度と技術:時代によって、研究できる社会制度と技術が決まります。
  • 建造物とユニット:使用可能なユニット、建造物、遺産の種類は時代によって決まります。
  • 独立勢力:「独立勢力」とは、マップ上に存在する干渉可能な小規模の勢力です。
  • ゲームシステム:一部のゲームシステムは各時代に固有であるため、それぞれの時代でユニークかつエキサイティングな体験ができます。
  • プレイ可能なマップエリア:時代によってマップの全体サイズとプレイ可能な範囲が決まり、プレイヤーが新しい時代に移行すると拡大します。

「時代の進展」は、その時代での進行度を表します。すべてのターンが時代の進展に少しだけ寄与します。一方、レガシーパスのマイルストーンを達成するなどすると、時代の進展メーターはより大きく増えます。一般的に、1つの時代は標準的なスピードでは150~200ターン程度続き、およそ3~4時間プレイできます。

先ほどのレガシーパスとは、1つの時代の間に達成すべき一連の目標のことで、科学力、軍事力、文化力、経済力の目標に分類されます。各レガシーパスには複数のマイルストーンがあり、パスの先に進むほど大きな報酬を得ることができます。新しい報酬を獲得するたびに、次の時代への移行時に利用できるボーナスが1つ以上解除されます。 

レガシーパスをすべて完了すると、次の時代で手に入る「黄金時代」のレガシーが解除されます。レガシーパスのマイルストーンを1つでも完了できなかった場合は、関連する「暗黒時代」のレガシーが解除されます。全てのパスとその目標は、その時代のエッセンスをさらに引き出すために、その時代をテーマにしています。 

時代の終わりに近づくと、「危機」が発生します。その名のとおり、危機はゲーム中の全文明が直面し、乗り切らなければならないもので、その時代をテーマにしています。それぞれの危機は段階的に訪れ、時間の経過とともに深刻化して、適応しなければ国家を維持することが困難になります。ゲームプレイを続けながら、採用する危機政策の選択を迫られます。社会制度を完成させるときに取り入れる有益な社会政策とは対照的に、危機政策はネガティブな政策であり、専用のスロットがあります。

危機システムを作った理由はいくつかあります。第一に、時代の最後に変化と興奮を与え、時代の終盤を壮大なクライマックスにするためです。また、プレイヤーに興味深いチャレンジを与えます。対応方法に「正解」がないため、何度でもプレイしたくなるのです。そして最後に、多くの文明の物語的現実を反映しています。創造、成長、危機、再生から世界が再形成され、新時代が幕を開けるのです。

Hatshepsut Potential Paths

時代の移行

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のゲーム全体は、「古代」、「探検」、「現代」の3つの時代を巡ります。一つの時代が完成すると、全てのプレイヤーやAIは同時に時代の移行に入ります。時代の移行中は、3つのことが起こります。まず、新時代の国家の顔となる新しい文明を選びます。次に新しい時代に引き継ぐレガシーを選びます。そしてゲームの世界に大小の進化が起こります。 

新しい時代で新しい文明を選ぶとき、どんな文明でも選べるわけではありません。選択肢の決め手は3つあります。第一に、過去の文明と未来の文明の間に歴史的または地理的な繋がりがあれば、より歴史に根差した選択ができます。これまでに紹介した例としては、古代のエジプトから探検時代のアッバース朝、マウリヤ朝インドからチョーラ朝インドがあります。 

Ashoka Potential Path

第二に、特定の指導者は、際立って強いアイデンティティを持つことから、特定の文明を自動的にアンロックします。例えば、卑弥呼を選べば、必ず現代で「近代日本」をプレイできるようになります。

From Rome Potential Path

最後に、ゲーム中の行動によって、史実とは異なる道も切り拓くことができます。これは「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」コミュニティが長らく議論してきたことです。エジプトがモンゴルに「変身する」という現象に対する皆さんの反応(とミーム)は、私たちのもとにも届き楽しませていただきました。その上で、多くの理由からこの選択肢を入れたいと考えました。

第一に、それは楽しいものであるし、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」の「もしも」の実験精神を反映していると思います。第二に、特に史実に則ったプレイを重視しないプレイヤーを中心に、劇的な戦略変更の可能性を提供したかったのです。もし探検の時代に馬に囲まれることになったら、大海原を渡るのではなく、モンゴルの強力な騎兵隊を使って母国の大陸を掃討したら面白いのではないでしょうか。 

最後に、これは「歴史は重なって形作られる」という概念の一部を反映していると考えています。歴史は幾多とある可能性から選ばれた一つの道筋である、そして文明は最終的にはその人民によって形成、舵取りされていくという考え方です。

Roman City

新しい文明を選択したら、新しい時代に引き継ぎたいレガシーを選びます。レガシーは、それを獲得するために十分な「レガシーポイント」を獲得して初めて選択できるようになります。レガシーポイントは、主にレガシーパスのマイルストーンを達成することで得られます。例えば、科学のパスでマイルストーンを達成すると科学ポイントが得られ、次の時代で科学のレガシーを獲得するために使うことができます。 

レガシーには様々なコストとボーナスがあります。一部のレガシーは「指導者属性」を1ポイントしか消費しないため、簡単かつ大量に獲得できます。また、前述の黄金時代のレガシーのように、よりコストがかかり前提条件となる実績を必要とするものもあります。私が特に気に入っているレガシーは「遷都」です。ノーコストで、内陸部の首都を海岸沿いの居住地に移動させ、新しい時代の試練や戦略的チャンスに備えるのに役立ちます。 

新しい文明とレガシーを選択し、新時代が始まると、ゲーム世界全体に一連の変化が起こります。全ての文明は、新しくなった「社会制度ツリー」と「技術ツリー」を引っ提げて新たなスタートを切ります。新たな資源がマップを埋め、世界が広がります。古代から探検の時代では、造船を研究して大海原を渡り「遠隔地」へ到達できます。そこで見るものは、既にその地を占有している未知の文明。来客の訪問を歓迎しないかもしれません。「過剰建設」によって、新しい時代に衰退して産出量の少なくなった古い建造物の上に新しい建造物を重ねることができます。新たなレガシーパスでは新しい目標が提示され、新しいゲームシステムが採用されます。古代では重要性の低かった「宗教」は、探検の時代では行動の重要な原動力となります。 

新たな文明を手にし、世界が変貌を遂げる中、一つの疑問が生じます。どうすれば国家の一貫したアイデンティティを維持できるのだろう。私たちはこの部分の調節と微調整に最も多くの時間を費やしました。ゲームが皆さんのお手元に届いた後も続けていくことになるでしょう。アイデンティティを維持する要因はいくつかあります。

  • 指導者は時代毎には変わらない。時代と共に指導者が変わらないことで、ライバル意識を促進します。築いた関係も引き継がれ、指導者は属性をレベルアップさせることで成長を続けます。また、時代を超えて同盟関係を結ぶに相応しい指導者、あるいは宿敵を決められるため、それぞれのプレイで自分だけの物語を紡ぐ感覚を得られます。
  • 伝統をいつでも使用できる。文明固有の社会制度ツリーに投資することで伝統を解除できます。どの時代でも使える社会政策です。現代では、全ての社会政策を伝統と結び付けるかどうかはプレイヤー次第で、指導者によってはそれでボーナスを得ることもできます。
  • 時代を問わない建造物。一部の建造物は、代えがきかないほど重要なものもあります。築いた遺産は、建設した固有の街区と同様に、常にマップ上に残ります。
  • 「司令官」が変わらない。司令官は特に強力かつインパクトのあるユニットで、戦場を調査する中でレベルが上がっていきます。全ての司令官の属性と経験は時代を超えて継続するため、これらのユニットに投資すると、長期的に価値が生まれます。

Norman City

時代の移行は、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』のゲームの遊び方の可能性を広げる要素です。遅れをとってしまったら、時代の移行で軌道に戻る方法が与えられます。好みのプレイスタイルをさらに強化したり、ある部分で劣勢になったと感じたら、まったく別の文明に転換したりすることもできます。雪だるま式に巨大帝国が拡大を続けることはなくなりましたが、レガシーポイントや黄金時代のオプションなどを通じて巧みな舵取りが報われるようにしたいと考えています。 

今後の可能性

時代によって、私たちが長らく取り組んできた問題を解決するだけでなく、新しいものを提供するシステムを作ろうと考えました。「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」に新しい風を吹き込み、よりダイナミックで魅力的でエキサイティングなゲームにするシステムです。歴史的な没入感という面で新たなレベルに到達できるのが時代です。各時代に特化したコンテンツを用意し、皆さんはそれぞれ全盛期の国家で競い合うことになります。あなたの固有のユニットや能力をすぐに引き出せる、より深く豊かな経験を提供できます。時代には既に多くの機能が含まれる設計となっており、以前のように拡張を待つ必要はありません。 

この新しいシステムを体験していただけるのが楽しみです。時代をコアコンセプトに据えて『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』を構築したことで、「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」のゲーム作りへのアプローチが大きく変わりました。文明の総数を大幅に増やすことになり、発売時にゲーム本編に収録された文明はシリーズ史上最多となりました。 

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の今後の展開と、さらに先の将来に期待しています。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。ご質問等ありましたら、フォーラムやReddit、私たちのSNSチャンネルでぜひお知らせください!