シヴファンの皆さん、こんにちは!サラです。2024年もいよいよ師走に突入しましたが、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』への期待は高まるばかりです。発売を2か月後に控え、12月は「エマージェントナラティブ」システムをご紹介する今回の開発者日記を含め、盛りだくさんでお送りします。エマージェントナラティブとは?ぜひ続きをご覧ください。また、ご質問やメッセージなどありましたら、いつものように「シヴ」のSNSまでお寄せください!
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こんにちは。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』ナラティブディレクターのキャット・マニングです。新しい「エマージェントナラティブ」システムについてご紹介させてください。今回の開発者日記では、エマージェントナラティブシステムとは何か、どう機能するのか、なぜこれを『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』で採用したのか、そして今後におけるその可能性について詳しくお話しします。
エマージェントナラティブシステムとは?
まず、ビデオゲームにおけるナラティブとは何かを解説しましょう。「ナラティブ」とは、ゲームがプレイヤーに伝えようとするストーリーや筋書き、テーマを指すことが多く、プレイヤーの行動に背景や目的を与えます。それがどのように体験されるかは、ジャンルによって大きく異なります。一本道なナラティブのゲームもあれば、プレイヤーの決断によってストーリーが分岐するものもあります。
「シドマイヤーズ シヴィライゼーション」をはじめとするストラテジーゲームでは、プレイヤーはしばしば自身の国家やゲームプレイにおいて自分オリジナルのストーリーを形成します。こうしたストーリーは、プレイヤーが下した選択とその決断の結果から生まれます。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』のシナリオ「アウトバックの覇者」のように、「シヴ」はストーリーイベントをずっと模索してきました。そんな中、「シヴ」のような自由度の高いゲームでいくつものイベントを含有する一方で、それを自身の選択から生まれる大きなストーリーに織り込んでいくシステムを作ることができないか?と考えたのです。
クリエイティブディレクターのエド・ビーチと私が『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』でこのようなシステムに何が必要かを初めて検討したとき、「歴史は重なって形作られる」(詳細はPAXのパネルをご覧ください)という概念を思い出しました。今作での新しいアプローチでは、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』の「ゴシップ」メカニック(プレイヤーが他文明の行動や活動について情報を受け取る)のような過去のシステムから学び、ゲームの展開を受けて反応することに重点を置いています。
当初は、プレイヤーの行動によって引き起こされる特定の「ストーリーイベント」のためにこのシステムを作りました。プレイヤーに対して自身の国家の住民たちに起きている状況を示したあと、2~3の選択肢を提供するものであり、正解・不正解というよりも、文明の優先事項や価値観を方向付けるためのものでした。
それからシステムが発展するにつれて、他にも様々な機能やメカニックの使い道が生まれました。「発見」(「グッディハット」の後継)、「危機」、そしてゲームの他の部分に肉付けするためにシステミックに生成されるコンテンツなどが挙げられます。
システムの仕組み
「エマージェントナラティブ」システムは、戦闘や技術の進歩、大きな功績など、ゲーム内の主要な出来事を追跡し、ゲームプレイに合わせたイベントで反応します。修正システムによって機能し、その中核にあるのは要件(条件)と効果(結果)の組み合わせです。
ストーリーイベントは、ゲーム中いつでも、その要件が満たされれば発生します。要件の内容は様々です。アウグストゥスの都市化の野望や、ベンジャミン・フランクリンの消防隊など、選択した指導者によって発生し、各々の生涯にまつわるストーリーを反映するものもあれば、文明の選択や特定のゲームプレイの出来事に紐付けられているイベントもあります。
さらに、ゲームの状態だけでなく、ストーリーイベントそのものの中でプレイヤーが下した決断を追跡できるようにしたいと考えました。場合によってはナラティブタグを適用することで、過去の時代で起こったことを想起させるストーリーイベントを発生させることができます。これは非常に強力で、シナリオライターはより繊細で具体的なストーリーを語ることができ、これまでにないレベルで歴史への没入感を演出できます。
古代では好戦的だったが、後に平和を貫く人物の物語を描くにはどうしたらよいのか? 私たちは、自身に投げかけた疑問の答えを求めました。修正システムだけでは、それを追跡するために必要な情報がなかったのですが、ナラティブタグを採用することで、このようなストーリーを含め、数え切れない可能性が開けました。
ストーリーイベントは、基本的に産出量や戦闘でのバフなどのゲームプレイボーナスを提供します。目指したのは、選択肢がほぼ同等の価値を持つように感じられ、ゲームの他の部分に支障をきたさず、また、発動の難易度やレア度に見合ったものにすることでした。プレイヤーが望む結果を得るためにガイドを参照しながらプレイするような作業感は与えたくありません。報酬を透明かつ平等にすることで、突き詰めた道を進む人と選択肢のナラティブ上のジレンマを楽しみたい人との間でバランスが取れます。中には結果が伏せられているようなストーリーもありますが、ほとんどのイベントではっきりと明かすことで、プレイヤーがこうした1度きりの状況でリスクに飛び込めるようにしたいと考えました。
1回のキャンペーンでは、こうしたストーリーイベントの一部しか見ることができないので、新しくプレイするたびに新鮮さを味わうことができます。先が見えない出来事を組み込むことで、あらゆるタイプのプレイヤーが未知を体験できるのではないでしょうか。
ストーリーイベントの種類
上述のように、ストーリーイベントには様々な種類があります。指導者の選択や文明の選択と連動するもの、どちらにも属さないものなどがあります。ストーリーイベントの脚本を書くとき、ワクワクするような大きなカテゴリーがいくつかありました。
- 歴史的なイベント:プレイヤーのゲームプレイと並行して発生する歴史上の大小の出来事です。古代の薬の発見、大胆な囚人の脱走、チャリオットの暴動、芸術の対立、巨大なモンゴル軍などがあります。
- 「もしも」のシナリオ:「シヴ」が持つサンドボックス的な性質ならではの「もしも」を探ります。もしも、アショーカが自身の犯した破壊行為に対して自責の念を持たず、暴力の道を突き進んでいたら? もしも、クセルクセスが敗北せずにギリシャ侵攻を成功させていたら?
- ユニークなゲームプレイの出来事:ゲームで直接下した選択を反映し、各時代におけるプレイヤーの行動の直接的な影響を示します。特定の伝統が有効な状態で黄金時代を達成したり、宗教の信条を選択したり、戦争や天候の被害を受けたりすることで、ストーリーイベントが発生する可能性があります。
ストーリーイベントは以前のイベントで下した選択を想起させることがありますが、タグシステムのおかげで時代を超えてストーリーを語ることができます。主にプレイヤーの指導者や文明に基づき、一定の条件を満たした場合のみ選択可能な追加の選択肢が生じることもありますし、プレイヤーが以前の時代で行ったことに共鳴し、ゲーム内で何千年も前に起こった出来事を参照するストーリーもあります。
発見
「発見」はストーリーイベントの一部であり、マップ上でのみ発生します。過去作における「グッディハット」に代わるものです。グッディハットとは異なり、発見では得られるボーナスを選択できるので、ゲーム初期のブーストに影響を与えることができます。また、報酬についてのちょっとしたフレーバーテキストも提供されます。
システミックイベント
「システミックイベント」とは、危機や独立勢力からの贈り物のように、ゲームプレイの中で繰り返し発生する出来事のことで、エマージェントナラティブシステムを使ってゲームのメカニックに文脈や個性を加えます。
計算して作られたストーリーイベントが物語であるのに対し、システミックなストーリーイベントは情報提供の役割があります。これらの目的は、完全なストーリーを語るのではなく「なぜ」や「どのように」を説明するナラティブ要素を加えることであるため、より単純です。
例えば、独立勢力との関係を改善すると「贈り物」を得られます。開発のある段階で、この贈り物はただテキストが浮いているだけだったのですが、QAチームがそれを見逃していることに気づきました。これをストーリーイベントにすることで、プレイヤーに報酬を知らせ、関係が改善していることを伝えながら、出来事に個性を加えることができました。単に画面の端に小さな通知として表示されるのではなく、これらの出来事がプレイヤーの国家のストーリー全体に組み込まれているように感じられます。
最後に
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、発売時点で1000を超えるストーリーイベントが用意されており、プレイするたびに新鮮さを感じられるようシステムを強化しています。エマージェントナラティブシステムを通じて、これまでになかった歴史的なストーリーや「もしも」のシナリオを導入する機会を得られました。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII 』が2025年2月11日(火)に発売されたときに皆さんの感想を聞くのが本当に楽しみです。