シヴファンの皆さん、サラです!今年最後の開発者日記は、皆さんも待ち望んでいたであろう「戦闘」についてです!シニアゲームデザイナーのブライアン・フェルギスが執筆した今回の開発者日記では、「シヴィライゼーション」シリーズにおける戦闘の歴史と役割、新たな軍事ユニット「司令官」がもたらす影響、そして『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の戦闘における追加の改善点について説明します。
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「シヴィライゼーション」コミュニティの皆さん、こんにちは。ブライアン・フェルギスです。2006年にFiraxisに入社して以来、「シヴィライゼーション」シリーズに携わってきましたが、デザイナーとしての初めての実績は 、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』の開発を始めたときでした。私はもともとウォーゲームが好きだったので、当時は『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』の軍事そして戦闘のゲームプレイシステムに没頭できることに、興奮しきっていました。この度、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の戦闘に導入される変更点、改善点、新機能のすべてをご紹介できることを嬉しく思います。また、私たちの一般的なデザイン哲学についても少しお話しします。
軍事的な争いは、「シヴィライゼーション」シリーズの中心的な要素であり、シリーズ開始以来、主な勝利条件のひとつとなっています。たとえ軍事力で世界を征服するつもりはなくても、強力な軍隊と戦闘の基本を理解しておくことは重要です。ライバル勢力や野心的な独立勢力から文明を守る能力は必須なのです。
戦闘システムの歴史
「シヴィライゼーション」における戦争の戦い方は、シリーズの歴史を通じて変化してきました。当初、プレイヤーは複数のユニットを1つのマップタイルに積み重ねることができ、コミュニティでは「Stacks of Doom(1タイルへの戦力集中)」と呼ばれていましたが、これらをぶつけ合わせて戦闘が行われました。ユニットの強さを比較し、ランダム要素を少し加味した結果、勝者が決定し、しばしば敵軍の全滅という結果をもたらすことになりました。
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション V』のリリースにより、正方形のタイルから六角形のタイルへの変更や、戦闘における「1タイル1ユニット制」の導入など、大きな変更が何点か生じました。これにより戦闘に新たな深みが加わり、戦場を支配していた「Stacks of Doom」から、より戦術的なアプローチへと変化しました。異なるタイプのユニットには依然として多くのメリットとデメリットがありましたが、現在では戦闘はマップ全体に広がる1ユニット同士の戦闘として繰り広げられます。プレイヤーは移動や地形に基づいて戦略的にユニットを配置し、近接戦闘に移る前に、範囲攻撃を利用して敵を弱体化させることができます。
この戦闘スタイルは『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』でも踏襲されましたが、1タイル1ユニット制に変更したことによる副作用もありました。「Stacks of Doom」が「Carpet of Doom(特定タイル群への戦力集中)」に置き換わったことで、特にゲーム終盤ではユニットによってマップが混雑することが増えました。このため、軽微な設計変更が何点か必要となりました。例えば、プレイヤーがユニットを1つのタイルにまとめて移動できるようにしたり、開拓者や労働者などの無防備なユニットを安全に護衛できるようにしたり、同じタイプの戦闘ユニットを1つにまとめてより強力なユニットにしたりするといった変更です。
それでも、ユニットの渋滞は発生し、ユニットの大軍をマップ上の別の場所へ移動させるのは、面倒で時間のかかる作業となる場合がありました。そこで『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、軍事システムと戦闘システムに新しい変更を何点か加えて、これまでの設計を改善し、新たな興味深いゲームプレイの機会を提供することを目指しました。
司令官
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の戦闘における最も顕著な変更点は、司令官ユニットの導入です。この強力な軍事リーダーは、近くのユニットを1つの「スタック」にまとめる固有能力を持っています。司令官とともにスタックされたユニットは、移動力ボーナスを受け取り、必要な場所へより迅速な再配置が可能になります。司令官の軍隊が到着すると、スタックが解除され、隣接するタイルにユニットが展開され、敵軍への攻撃、都市への包囲、領土の防衛に備えます。
司令官ユニットは経験値を獲得し、昇格(レベルアップ)をアンロックできる唯一のユニットである点で、ほかのユニットとは異なります。これは、個々の戦闘ユニットがレベルアップできる可能性があったこれまでの「シヴィライゼーション」タイトルとは異なる点です。司令官は主に、近隣の軍隊が関与する戦闘を通じて経験値を獲得し、昇格によって、バフやボーナスが付与されます。バフやボーナスは、司令官の指揮範囲内のユニットの戦闘力を強化するものから都市区域に駐留している際に収穫量を増やすものまで、さまざまです。
司令官ユニットを戦場に配置するだけで戦闘で優位に立つことができます。軍事に重点を置くプレイヤーにとって、経験豊富な司令官が軍隊を率いることは不可欠です。司令官は全時代共通でもあります。ゲーム中、過去の時代で獲得した経験値やレベルアップをすべて保持し、戦場での優位性を継続的に確保します。
司令官が獲得できる昇格の範囲は広大で、複数のテーマを持つ「規律」ツリーを網羅しています。これにより、プレイヤーは1つのツリーを深く掘り下げていくか、複数のツリーにまたがって習熟度を広げるかによって、司令官をさまざまな方法でカスタマイズすることができます。地上戦、海戦、空中戦にはそれぞれ独自の司令官ユニットがあり、それぞれに少し異なる規律ツリーが用意されています。地上戦の軍団司令官の場合、規律ツリーは以下の通りです。
- 稜堡:攻撃を受けた際に軍の健康を維持するための防御ボーナス
- 突撃:主導権を握る際に優位に立つための攻撃ボーナス
- 兵站:軍の規模の拡大などが可能になる、作戦に重点を置いたボーナス
- 機動戦:マップの移動が容易になる、移動に重点を置いたボーナス
- 指導力:戦場での影響力を強化する、司令官ユニット自体に焦点を当てたボーナス
戦闘ユニットを戦闘でより効果的にするだけでなく、司令官は、指揮範囲内の複数のユニットに同時に特別な行動を命じる能力も持っています。これには、追加の戦闘ボーナスが付く攻撃命令、回復、修理、または要塞化陣地の建設開始を命じる命令が含まれます。同様に、統合した軍隊を使って弱いユニットを圧倒し、個別に展開して戦う必要性をなくすこともできます。
最後に、司令官は遠隔地から軍事作戦を指揮する能力を合理化します。戦闘には犠牲がつきもので、プレイヤーはしばしば、戦闘や特に困難な包囲戦に新たなユニットを投入する必要に迫られます。 代替ユニットを前線に移動させるには時間がかかり、目の前の戦闘に集中できなくなります。そこで、司令官が援軍を要請できる機能を導入しました。これにより、プレイヤーが各ユニットの移動を個別に管理する必要なく、新たなユニットをその場所に自動的に移動させて戦闘に参加させることができます。
総じて、司令官は戦闘に新たな要素を加え、プレイヤーに求められる煩雑な管理の負担を大幅に軽減します。皆さんがこれらの強力なユニットをどのように活用するのか楽しみです!
包囲戦
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』では、居住地が都心外にも追加され、居住区が広がりました(エドワード・チャンの「開発者日記#3:国家の管理」を参照)。そのため、包囲戦の仕組みにも変更が加えられました。
防御の観点から、プレイヤーは市街区域の周りに防壁を建設し、特別な軍事施設や遺産を建設することで都市を要塞化することができます。攻撃部隊が居住地を占領するには、都心を占領する前に、これらのタイルをそれぞれ征服し、支配する必要があります。一方で、防壁で囲まれた区域を破壊し、占領すれば、その地区の支配権を獲得し、防御側の産出物や利益を奪うことができます。
これらの変更により、居住地を占領するペースや難易度は状況によって大きく変化し、国家を拡大するための戦略性が広がります。急速に建設を進め、防御に投資しないことを選択した場合、文明の最前線にある居住地の支配権を維持することは困難になるでしょう。また、要塞化された町や都市を占領したい場合は、防壁の破壊を専門とする攻囲ユニットを用意する必要があるでしょう。航行可能な河川に位置する町や都市についても考慮する必要があります。防御を適切に行わなければ、内陸を航行する海軍に、居住地を占領される可能性があります。
戦場のビジュアルの改良
1ユニット1タイル制の戦闘の特徴のひとつは、戦闘が1つずつ行われることであり、各ユニットが順番に攻撃と防御を行います。通常、自分のターンでは、いくつかの敵ユニットを攻撃します(多くの場合、完全な破壊には至りません)。相手のターンでは、自身が攻撃される側になります。
視覚的には、攻撃者が前進して戦闘を行い、戦闘アニメーションを実行し、元の位置に戻るという動きで示されます。複数のユニットが順番にこの動きを行う様子は、場合によっては滑稽に見えます。安っぽいアクション映画で、悪役のグループが主人公を攻撃する順番を待っているようなものです。あるゲームジャーナリストは、4Xゲームの戦闘を、モンティ・パイソンのコントに例えました。そのコントでは、ある男が小走りに近づき、魚で相手の顔を打ち、また小走りに戻るというものです。その例えの正確さに思わず笑ってしまいました。私たちも同じことを感じていたからです。それでも、これまでの「シヴィライゼーション」シリーズにおける戦闘には必要な演出でした。
ちょうどその頃、ユニットチームから、戦闘を中止して元の位置まで後退させる必要があるかどうか尋ねられました。もし、ゲーム内で戦闘がすでに決着していたとしても、ユニットが破壊されるかゲームターンが終了するまで戦闘を継続させるとしたら?この瞬間、形が機能を決定し、ゲーム内の側面攻撃のシステムに変化をもたらしました。
過去の「シヴィライゼーション」のゲームでは、 軍事シミュレーションゲームでよく見られるようなユニットの向きに関する仕組みは導入しませんでした。つまり、攻撃や攻撃を受ける方向は特に問題ではありませんでした。攻撃の方向は、側面攻撃をシミュレートしたい場合には重要ですが、そこまでの細かい要素は、すでにさまざまな規模で国家の管理について考えなければならない「シヴィライゼーション」のプレイヤーにとっては、あまりにも煩わしいものだと考えました。
ゲーム全体における煩雑な管理の削減と、継続的な戦闘ビジュアルというユニットチームのアイデアを形にしたいという思いから、適切な側面攻撃ボーナスを実装することにしました。プレイヤーは、各ターンで特定の方向を指定する必要はありません。つまり、戦闘前に方向を選択する必要がなくなり、敵と交戦すると自動的に2つのユニットが正面を向きます。そして、正面が決まれば、側面や背面から攻撃することができます。継続的な戦闘を実装することは、ユニットチームと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』の戦闘デザインの両方にとってウィンウィンの結果となりました。
バランスを見つける
「シヴィライゼーション」の魅力のひとつは、さまざまなシステムの連携によって、歴史的な文明を管理する壮大なスケールを表現しているところです。「シヴィライゼーション」の開発に携わっていてすぐに気づくことは、「シヴィライゼーション」のどの部分が最も楽しいかは、十人十色だということです。
プレイヤーの好みはそれぞれ異なり、軍事的な側面を楽しむプレイヤーばかりではありません。先ほども述べたように、国家を築き、管理する上で戦闘は常に必要不可欠な要素でした。ゲームデザイナーにとっての課題は、戦闘を気軽に楽しみたいプレイヤーにも、規模の大きな軍事キャンペーンを追求するプレイヤーにも十分な深みと報酬を提供できるような体験を作り出すことです。
そのバランスを見つけることは、常に困難を伴いますが、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、導入されたすべての新機能、調整、変更により特別な仕上がりになったと考えています。皆さんが世界征服のためにどのような戦略や戦術を用いるのか、あるいは国家を守り時の試練に耐えることができるのか、非常に楽しみです!